着地点

あきこちゃんからの提案

短期間に集中して利用したせいなのかデリヘル「W」の僕に対する待遇が初期と比べてかなり良くなってきている事はなんとなく僕も感じていた。良くなったとはいっても予約なしでも融通をきかせてくれたり、予約する際も他のお客さんの前に僕をねじ込んでくれるようになったりという程度ではあったが、普段ススキノのホテルを利用する僕にとって「W」のようにススキノのホテルへは嬢を一人で派遣するスタイルの「お店」との接点は予約の電話だけとなるので、その唯一の接点に融通がきくというのは僕にとってとても有り難いことだった。

あきこちゃんも短期間に連続で指名したり、その際も必ずオプションを付けていたので僕を「太い客候補」として意識はしていたようだったけれど、3時間コースに連続で入ったあたりから意識の中で何かがうつろいはじめていたようでした。

3時間コースに連続して入った直後のこと。いつものようにススキノのホテルでプレイを終えたあとに突然「今日のホテル代は私が持つ」と言い出した。有難い話だけれどそうもいかないので断ると「それじゃ私の取り分は要らないから半額でいいから」とまで言う。

「どうしちゃったの?大丈夫だよw」
「なんかハル君に悪い気がする・・・」

正直なんて言って返せば良いのかが分からなかった。
もの凄く有難いことだし嬉しいんだけれど、いま現在の良好な関係がこれをキッカケに崩れてしまうんじゃないかという気持ちに苛まれてしまった。

「ありがとう。でも今日は普通に払わせて。」
「え~、だって・・・なんか・・・」

僕がそう断るとあきこちゃんは何か言いたそうにしていた。

いま思うとこの辺りから「嬢」と「客」という関係が少しずつ崩れ始めていたのかもしれない・・・

あきこちゃんとアナルセックスをしてからも普段は通常のデリヘルコースにオプションで浣腸を付けるというプレイスタイルで僕はあきこちゃんを呼び続けた。

あきこちゃんが 「ホテル代を出す」 「自分の取り分は要らない」 と突然言いだしたのを断ってから次に呼んだ時のこと。

一通りプレイを終えてまったりしているとまたあきこちゃんが料金の値下げを申し出てきた。一瞬お店の指示でそういう事を言い始めたのかなとも思ったが、 あきこちゃんの話をよく聞いてみるとどうやらそういう訳でもでもないようだった。 料金を下げさせて欲しいというよりはこんなにたくさん支払わせるわけにはいかないという口ぶりのあきこちゃん。

「今日はホテル代だけでも私に払わせて。」
「どうしちゃったの?別に気にしなくてもいいんだよ。」

「なんかハルくんに悪い・・・」
「悪くないよ。呼んだのは俺なんだしw」

「いつも指名してくれて本当に嬉しいんだけど・・・ハルくん大丈夫?」
「大丈夫も何も全て最初に決めた予算の範囲内だよ。」

「あっ、そういう意味じゃなくて・・・ごめんなさい。」
「ううん。ありがとう。」

けっして見くびられたと感じて怒ったわけじゃない。僕はあきこちゃんの気持ちが嬉しくてしょうがなかった。ただ、ここであきこちゃんに甘えてしまえばきっと僕の中で何かが大きく変わってしまい、結果いま現在ある僕とあきこちゃんとの良好な関係が壊れてしまうんじゃないかという漠然とした不安に怯えてしまっただけの事であった。これは僕の精一杯の強がりだ。

でも正直なところ僕の中にも迷いはあった。あきこちゃんとの信頼関係が維持できるのならば、お店を通さないで個人的に会った方がより融通が利くようになるし、なにより僕の払う金額は一緒でもお店の取り分が無くなった分だけあきこちゃんの取り分は今の2倍になる・・・でも今はそれを言うタイミングではない。

あきこちゃんが不満半分、申し訳なさ半分といった表情をしている。接客上ひいてくれたが納得はしていない様子だ。

僕からの対案

「・・・」
「じゃあさ、次に呼んだときにホテル代お願いしてもいい? でさ、その浮いたお金でご飯食べようよ。」

「それじゃ意味ないよぉ~ ご飯は割り勘にしよ?」
「もう予算を決めちゃってるからさw」

「予算を決めてるんだったら・・・浮いたお金でまた呼んで欲しい・・・ ご飯はご飯で食べに行こ。」
「わかった!頑張ってまた稼ぐからw とにかく次回ホテル代よろしくね。」

あきこちゃんは先程より表情が和らいだがまだ何か言いたげな表情だった。だがここで話を詰める必要は全くない。 きっともっと仲良くなれれば今日言えなかったことも話してくれるようになるだろう。

そんな事より、ひょんな事からあきこちゃんとお店以外で会う約束を取り付けることが出来てしまった。長時間コースの擬似同伴ではなく今回は正真正銘の店外デートだ。

いつの間にか何かが動き始めているのは間違いなかったが不思議と先程まであった不安が少しずつ薄れていくような気がした。

女性との初体験を経験することなく風俗への道を歩み始めてしまった当時の僕は、その直後に初体験を済ませたとはいえまだまだ女性の扱いに翻弄される事がたくさんあった。そして風俗の道も僕にとってすべての事が衝撃の連続であり、女性経験の少なさも相まって当時の僕には不安がいつも付きまとっていた。

デリヘル「W」で4人目の嬢としてあらわれたあきこちゃんは僕にとって居心地のいい空間を作ってくれる娘だった。自然な流れとしてその後連続して指名する事となった。回を重ねるごとに打ち解けていく二人。でも、当時の僕の中にはまだあきこちゃんを「嬢」として扱い「嬢と客」という関係性において良い客であろうとする気持ちと、あきこちゃんをいち女性として想いあきこちゃんとの距離を縮めていきたい気持ちとが混沌とした意識の中で交錯していた。

自分で言うのもおかしいが、これは僕自身の中にある変な生真面目さが「ルールを守らなければならない」と自分を追い込んだ結果感じてしまう不安なのだろう。

更にこの不安に拍車をかけたのは「風俗は怖い人がやっている」という偏見だった。
「お店でトラブルを起こしたらきっと酷い目に遭うに違いない。」本気でそう思い必要以上にそれを恐れていた。

「あきこちゃんともっと仲良くなりたい・・・」
「お店を通さずにあきこちゃんに会いたい・・・」
「でもお店にバレたら酷い目に遭うかもしれない・・・」
「多額の料金を請求されるかもしれない・・・」
「怖い人にボコボコにされるいかもしれない・・・」
「でも、あきこちゃんにとっても悪い話じゃないよな?」
「いや、そんな事したらドラム缶に詰められるかもしれない・・・」
「・・・やっぱりルールを守って遊ぼう。」

そんな混沌とした思いの中で初の店外デートの日を迎えた。

過去にもプレイの前に食事をした事があったけれど、それは長時間コースに含まれていた事だったのでお店を通さずにあきこちゃんと会うのはこれが初めてだった。

お店にバレたらどうしようと緊張でガチガチになりながらあきこちゃんを迎えに行く。
しかしあきこちゃんは実にあっけらかんとしていた。

「お店にバレたらまずい・・・よね?」
「言わなきゃわかんないでしょw」

一点の曇りもない笑顔でそう言われると急に僕の気持ちも軽くなってきた。
楽しく食事を済ませてお店を出る際。

「また誘ってもいい?」
「今度は私が出すね(^-^)」

全然問題ないといった態度が嬉しかった。
そしてガチガチに緊張していたさっきまでの自分が可笑しく思えてきた。

その後デリヘルの待機場所の近くまであきこちゃんを車で送り、僕はいつものホテルに
部屋を取る。事前に予約をしてあるのであとは「W」にTELをするだけだ。

10分後・・・

「また会ったねw」
「さっきぶりwww」

そんな事を何回か続けた。

僕たちの着地点

あきこちゃんから値下げの提案がなされ、プレイ前に一緒に食事をする事がそれほど珍しい事ではなくなってきた辺りから、僕達の関係は以前のモノと確実に違うモノへと変化してきていた。当然な事として僕とあきこちゃんとのプレイには常にお店が介在しているのだが、「僕」「あきこちゃん」「お店」という関係の中で「僕」と「あきこちゃん」との関係が近くなるにつれて「お店」の存在が徐々に薄れつつあった。

悪く言えば「なぁなぁの関係」になってきていたという事だ。しかしこれは間違いなくお互いの信頼関係が築けてきている事の裏返しでもある。

僕はプレイを終えてお金を払うときに、意を決してある提案をあきこちゃんに提示してみることにした。

これをあきこちゃんが受け入れた瞬間に僕達のプレイに関わる「僕」「あきこちゃん」「お店」という関係が破綻する。いや、既にこの段階で関係にほころびは出来ているのだから言わずにこのままの状態を続けていたとしても関係はいずれ破綻することだろう。最悪「あきこちゃん」と「お店」の両方を失ってしまう・・・でも、言うならこのタイミングしかない。

「ねぇねぇ、次はお店通さないで会える?」
(うぁ・・・言っちゃった・・・)

緊張で声が上擦ったのが自分でもわかった。
そりゃそうだ。この発言にあきこちゃんが引いてしまえば今まで築き上げた信頼関係などブッ飛んでしまうのだから・・・ おまけにこの発言がもしお店にバレるような事があれば出入り禁止になる事だってあり得るだろう・・・

「うん。いいよ(^-^)」

ビックリするくらいの即答でビックリするくらいにあっさりと答えるあきこちゃん。

「えっ・・・いいの?」
「いいけど・・・たまにはお店通してねw 成績とかもあるし。」

「あっ、うん。大丈夫!毎回って訳じゃないし、ほらっ、お店通さなきゃお金は全部あきこちゃんのものになるしさ・・・ね?」
「ううん。全部は要らないから(^-^)」

あっさりとOKをもらえた事に僕は逆に戸惑ってしまった。しかもまたお金を要らないとか言い始めてるし・・・一体どういうつもりなんだろう?

「ありがとう。でも、あきこちゃんの時間は拘束しちゃうんだからさ、やっぱりその分のお金はちゃんと払わないと・・・」
「一緒にいると楽しいし・・・本当にいいから(^-^)」

「いや、そうなっちゃうと逆になんか悪い・・・(´・_・`)」
「なんかハル君と一緒のときって仕事の感じしないんだよねwww 気にしないでいいから(^-^)」

確かにあきこちゃんは僕との食事を重ねる度に、口調がおすまししていたものからさばけたものへと変化してきていた。いまではすっかり会話も友達同士然としたものとなっている。しかし僕はそれをあきこちゃんの客に対する気遣いの一環だと思っていたふしがあった。

ここまで簡単に提案が飲まれてしまうと逆にあきこちゃんが不憫に思えてきた。
なにか理由があって無理をしてるんじゃないだろうか?

どちらにしてもあきこちゃんの不利益になるような事にする訳にはいかない。
なにか良い方法はないだろうか?

次に会うまでに何か良いアイディアは無いものかを考えるつもりだったが仕事の
忙しさに翻弄されている間に当日を迎えてしまう。

僕は時間に間に合うように車を待ち合わせ場所へと走らせた。

食事は無事に終了。車はススキノのホテル街へと向かっていた。車中、僕からあきこちゃんにいつものホテルとは違うホテルを使いたい旨を伝えた。ロングコースの時に使った休憩が3時間に設定されている店だ。

せっかくあきこちゃんとお店抜きで会える機会を得たものの、僕にはあきこちゃんがどこか無理をしているような気がしてならず、いろいろ考えたあげく僕なりの着地点を見つけ出した。

それはホテルに普通のカップルとして入室して最初の2時間弱をプライベートで楽しみ、残りの1時間をお店の客として楽しむというアイディアだった。早速その旨もあきこちゃんに伝える。

「今日はそんな感じにしたいんだよね。」
「え~・・・いいって。今日はお店にも遅れるって言ってあるから。」

「なんかちょっと面白そうでしょ?途中から仕事になるのってw」
「仕事は仕事で別の日でいいし・・・(´・_・`)」

あきこちゃんは納得した風ではなかったけれど、お店を通すのならお店への予約は早いに越したことはない。僕がそういうと渋々あきこちゃんがお店へ連絡を入れてくれた。

せっかくのデートの機会をこんな事にしてしまったのは前回あきこちゃんが少し匂わせたお店での成績のことが気になっていたからだった。いま思えばこの時の僕たちは奇妙な「気遣い合戦」をしていたように思う。 あきこちゃんが僕の経済的な負担を気遣い、僕があきこちゃんのお店での立場を気遣っていた。こういった時に上手く立ち回れないのは僕が女性に慣れていないという事を顕著にあらわしていてそれは今も全く変わっていない。

時間に余裕があったので浣腸も排便鑑賞もゆっくり行う事ができた。それでもまだ時間があったので69で射精も済ませてしまう。そのままベッドの上でまったりしているとあきこちゃんの出勤時間になった。

「そろそろ行く時間だね。」
「うん。ちょっと行ってくるw」

ホテルからデリヘル「W」の待機場所は歩いても数分なので10分ちょっともすればあきこちゃんはまたこの部屋に戻ってくる。僕はあきこちゃんが部屋を出てから「W」に客として入室連絡をした。このホテルは入室後も出入りができるホテルなのを事前に知っていたからこそのアイディアだった。そして本当に10分程度であきこちゃんが部屋に戻ってくる。

「10分ぶりだねw」
「なんか変な感じがするw」

もうする事は何もないのでベッドの上でいちゃいちゃしながら時間が来るのを待つ。
20分もした頃だろうか、あきこちゃんがなにか言いたそうな素振りをみせた。

「どうしたの?」
「やっぱりこういうの止めない?」

「ごめん・・・次はお店を通すね。」
「ううん。そうじゃなくて、途中から仕事にするとかそういうの。」

「うん。次は最初からお店通す(´・_・`)」
「だ~か~ら~、今日みたいな日は仕事じゃなくてもいいの。」

「だってお店での成績もあるんでしょ?」
「いや、確かにあるけど・・・」

会話が逸れてきて変な空気が漂いはじめた。その原因は間違いなく僕にあった。
あきこちゃんの善意を受け入れる事であきこちゃんに不利益が起こってしまいそうな不安に駆られた僕は、あきこちゃんの善意を素直に受け止められないでいた。

結局残りの時間で話し合って、普段はお店を通して遊び、食事をするような時はお店を通さないという事になった。

今度は2人で話し合って決めた着地点だ。

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